サロン  〜ミリオンオールナイトシネマVol.25〜

公開日 : 2008年05月02日 11時45分

 

 今年もゴールデンウィークの季節。そこで、映画好きな方にお薦めしたいのが、5月3日(土)深夜に行われるミリオンオールナイトシネマVol.25。今回の特集は、今、銀幕を中心に大活躍している加瀬亮の特集。 

 加瀬亮と言えば、『それでもボクはやっていない』で冤罪の被害にあった青年役を好演したのが記憶に新しいところですが、今回の特集は、それ以前の三作品(『スクラップヘブン』『アンテナ』『ストロベリーショートケイクス』)をセレクト。この中では、特に『アンテナ』の役柄に注目。幼い時に、妹を失った兄の喪失感と、罪悪感、その心の傷をナイーブに演じています。また、熊切監督の鋭利な、それでいて繊細な演出も光ります。6月公開の「ぐるりのこと。」でも、また新しい人物像を演じる加瀬亮。この機会に、加瀬亮ファンの方も、そうでない方も、是非ともご覧いただきたい特集です。 

 ところで、オールナイトシネマの休憩時間、ミリオン座のロビーはいつもと違った雰囲気に包まれます。飲み物片手に、お客様同士の明るい談笑が聞こえてくるのです。それは、一種、映画サロンの様相。映画を楽しむとともに、映画ファンの交流も深まれば。ふと、そう思いました 

  

道場〜「うた魂♪」〜

公開日 : 2008年04月08日 17時39分

  お休みの日、しばしば本屋を探索します。気が赴くままに、本を手にして立ち読みをするのですが、その一冊に励まされることが多々あります。最近、感銘を受けた言葉は、「自分の道場を見つけること」。その本は「プロレス金曜8時の黄金伝説」(講談社刊)。著者は元プロレスラー山本小鉄さん。今回、ご紹介する作品の主人公にとって、道場は合唱でした。

  

  物語の舞台は北海道のとある町。女子高生、荻野かすみは合唱部のソプラノリーダー。野球部が甲子園、俳句クラブが松山を目指すように、自身の才能を信じて疑わない彼女の目標は、全国合唱大会に出場すること。そして、密かに想いを寄せる生徒会長で写真部員の牧村からも熱い視線を感じ、青春を満喫しているかすみ。ある言葉を聞くまでは・・・  

 「(歌っているとき)産卵中のシャケみたいな顔しているよ」

  愛の告白か、そう思って胸を時めかせていたかすみに、牧村が告げたのは思いもよらぬ言葉。青春ドラマの主人公になりきっていたかすみの心は谷底に突き落とされます。

  自信喪失し、合唱への熱意が一気に失せるかすみ。そんなある日、彼女の前に不良合唱団の番長・権藤が現れます。やる気のないかすみに、番長は喝を入れます。

「合唱をなめてるんじゃねぇぞ!このやろう!」 そして彼らの歌う尾崎豊「15の夜」。それは魂を揺さぶられるものでした。番長らに触発されて再び合唱に目覚めるかすみ。迎えた合唱大会地区予選当日、かすみたち七浜高校合唱部は・・・

  

  人にとって道場は何だろう? 私にとってそれは?本作を観終えた後、そう自問しました。それは、素晴らしい映画を伝えていくこと。このブログも二年目を迎えました。これからもよろしくお願いいたします! 

消しゴム 〜「君のためなら千回でも」〜

公開日 : 2008年03月14日 10時33分

  「人生に消しゴムはない・・」 これは友人から贈られた言葉です。思い出したくないような出来事を、日記帳の文章のようにゴシゴシと消し去ることはできません。人は、その過去をどうやって乗り越えていくことができるのでしょうか? 本作の主人公、アミールにとって、それは・・・

  

  舞台は1970年代後半のアフガニスタンに遡ります。平和な日常生活の中、人々はささやかな幸せを享受していました。そして、元気一杯な町の子どもたちの関心事は、凧揚げ合戦でした。裕福な家の子のアミールと、その家の使用人の息子ハッサンは、身分の差を越えて大の仲良し。二人して凧揚げ合戦に挑みます。「君のためなら千回でも」ハッサンの献身的な努力で二人は凧揚げ合戦の勝者に。大人たちの祝福に包まれ喜びの絶頂にいるアミールとハッサン。しかし、そこに落とし穴がありました。ハッサンは民族的差別を受けていたのです。虐待されるハッサンを傍観することしか出来ず自責の念に駆られながらも、素直に謝ることができないアミール。やがて、二人の友情に小波が。その頃、大人の世界にも荒波が襲います。ソ連軍の侵攻が始まったのです。歴史の波に翻弄され、離れ離れになる二人。

  それから、20数年の時が流れます。アメリカで作家としての地位を築き始めたアミール。そんなある日、故郷から一本の電話が入ります。「帰ってこい」。過去の忌まわしい思い出が、アミールに蘇ります。「今からやり直せる」 果たして、アミールはハッサンの友情に応えることができるのでしょうか・・・

  

  今までの人生を振り返ってみると、後悔の連続と言っても過言ではありません。でも、どんなことがあっても、生きている限り、新しい1日はやっていきます。過去を反省し、その経験を明日にどう活かしていくのか、それが大切なのではないだろうか。ラストシーン、サンフランシスコ上空に活き活きと翻る凧を観ながら、そう思いました。 

  

明日は・・・ 〜「ユゴ 大統領有故」〜

公開日 : 2008年02月27日 20時58分

 一発の銃声で歴史が大きく動くことがあります。第一次世界大戦も、その発端はオーストリア・ハンガリー帝国皇位継承者夫妻に向けられた銃弾でした(サラエボ事件)。また、戦前、わが国の軍国主義への勢いを加速させたのも、時の首相に向けられた銃弾(515事件)。それらの銃声は多くの人々を悲劇へと導いていくことに。今から28年前の晩秋、韓国で運命の銃声が響きます・・ 

  

 1979年10月26日、物語の舞台はソウル市内にあるVIP専用のリゾート施設。各地でおきる学生デモなど、不穏な空気が流れる中、KCIA(韓国版CIA)のチョ儀典課長は、今日も宴会に華を添えるための女性調達に追われています。その宴会とは、時の最高権力者、パク大統領とその側近たちのプライベイトな宴会。「国家が大変なときに何をやっているのか・・・」 チョの心の中には忸怩(じくじ)たる思いが。しかし、その日はいつもと違いました。チョ課長の上司であり、宴会の参加者であるKCIAキム部長は、重大の決意を胸に秘めていたのです。 

 その晩、リゾート施設の宴会場でパク大統領は、二人の美女に囲まれて上機嫌。大統領の指名で女性の一人が歌いはじめます。曲は日本の演歌「北の宿から」。当時、韓国では日本の楽曲は禁制になっていましたが、戦前、日本の士官学校を卒業していた大統領は密かに日本の歌を愛していたのです。その頃、宴会場を抜け出したキム部長は、チョ課長ら部下を集めます。 

 「世の中は変わるんだ。今日変わる! 私が撃てば、行動開始だ」 キム部長から決意を告げられるチョ課長ら。華やか宴会場が今、まさに銃弾によって血に染まろうとしていました・・・

 

 「昨日は変えられない。でも明日は変えられる」 数年前に行われ選挙広報でこのようなコピーがありました。そう、今の私たちには、意思表示のための尊い投票権があるのです。そう言えば、昨年暮れには韓国の大統領選挙もありました。私たちの明日、それは銃声ではなく、民意によって決められていく、そう信じています。きっと。 

調和〜「歓喜の歌」〜

公開日 : 2008年02月11日 16時29分

  祖父の好物のひとつに「ご馳走焼き」がありました。と言っても、それはごく普通の「お好み焼き」のこと。お肉に野菜、卵、そして時には海老と、豊富な具がいっぱいの「お好み焼き」は、確かに「ご馳走」なのかもしれません。新作落語を原作に、華麗なコーラスをも盛り込んだ本作は、まさに映画の「ご馳走焼き」ではないでしょうか?   

 

 毎年、年末になるといたるところで奏でられる「歓喜の歌」(第九)。今年の大晦日も、この曲で締めくくられるはずでした。一本の電話が文化会館にかかってくるまでは。「主任、今、電話で話したのは、みたま町コーラスガールズですよね。こっちに書いてあるのは、みたまレディースコーラス」。時に12月30日。本番の前日に発覚したダブルブッキング。「どうせ、おばさんが暇つぶしでやってるものだから・・・」 主任の飯塚は甘くみていたものの、二つの合唱団の人々はカンカン。 

 「ダブルブッキングって、3分間クッキングと訳が違うんだから!」 

 無理もありません。舞台に向けて団員たちは錬に錬を重ねてきたのだから。こと流れ主義の飯塚も、団員たちの情熱によって、失われていた仕事に対する「誠意」が徐々によみがえってきます。団員たちと、東奔西走しながら事態解決に走る飯塚。残された時間は、1日。果たして、大晦日に「歓喜の歌」の歌声は響くのでしょうか・・・

   

 どんな高級な食材を使っても、その取り合わせを間違えると美味しくはありません。合唱と同じく調和が大切なのです。それは人間関係も。銀幕で映し出される合唱の音色を聴きながら、ふと、そう思いました。 

勇気   〜「ペルセポリス」〜

公開日 : 2008年01月28日 15時33分

 子どもの頃、21世紀といえば、夢の輝いた世界を思い描いていました。さすがにドラえもんは期待していませんでしたが、空飛ぶ自動車や、不死の薬等々が発明され、快適な生活が保証されていると思っていたのです。しかし実際は、便利の代償か、何かと世知辛い日常が私たちを囲っています。そんな今、私たち現代人を励ましてくれる作品に出会いました。それが本作。

 

  ブルース・リーとロックミュージックが大好きな女の子、マルジ。お父さんとお母さん、それにおばあちゃんの愛情に包まれて今日も元気一杯。でも、最近、お父さんお母さんはじめ大人たちは、何だか深刻な様子。それに、街ではお兄さんお姉さんたちがデモ行進。それを阻む軍の銃声も。物語の舞台は、1970年代後半のイラン。今まさにイスラム革命が進行していたのです。
 「マイケル・ジャクソン!堕落のシンボル!」革命後は、街も学校も大きく様変わり。国王独裁よりも良い世の中になる。みんなそう信じていたのに実際は前よりも・・大好きな音楽も否定され、ヴェールの着用も義務づけられます。そして尊敬していたコミュニストのアヌーシュおじさんも逮捕されます。しかし、お父さんお母さん、そして、おばあちゃんのマルジへの愛情は少しも変わりません。それに励まされ、マルジは自分の信じた道を歩もうとするのですが・・・

 

「恐れが人に良心を失わせる。恐れが人を卑怯者にもする。お前は勇敢だ。私は誇らしく思うよ」
 傷つきながらも前向きに、信じた道を進むマルジ。そんな彼女に、おばあちゃんはそう言って励ましてくれます。その言葉に微笑むマルジ。例え、今、苦しくても自分の信じた道を真面目に生きていけばいつかきっと・・本作を観終えた後、少し勇気がわいてきました。

踏み出してみると・・・〜「めがね」〜

公開日 : 2008年01月05日 11時17分

  日常生活という日々変わらぬ軌道から、ふと踏み外してみたくなる時があります。例えば朝、地下鉄駅通路に響く無数の足音を聞いた時。思わず、旅に出たくなるのです・・・ 

 

 「携帯電話の通じないところへ行ってみたい」その思いで南の島へと旅立ったタエコ。背筋をピンと張って歩く姿が印象的な彼女は、何かに疲れてしまった様子。仕事に? それとも、恋愛に? ただ、わかっているのはタエコを追って島を訪れた青年が彼女のことを「先生」と呼ぶことだけ。降り立った島には、青い海と空が広がるけれどリゾート施設は皆無。

 「才能ありますよ。ここ(島)にいる才能」 島の宿の主、コージからそう褒められても喜んで良いのかどうか。また、島で出会った人々も少し変。コージーもそうですが、季節外れの氷屋のおばさんも、何か曰く有りげ。どうやら、島には、都会とは違った時間が流れているよう。生真面目なタエコは違和感を抱いていきます。ご飯は美味しいけどね・・ 果たして、タエコにとって、島での生活は、素晴らしい休暇となるのでしょうか? 

 

 日常生活に疲れた時、私は旅に出ます。と言ってもお金と時間に恵まれないため、「青春18切符」(もう青春って年ではないですが)片手のささやかな旅。今まで、列車に揺られ、一人で「たそがれて」いる旅でしたが、見知らぬ土地で、人と触れ合うことも旅の醍醐味かな、本作を観た後、そう思いました。そして、美味しいご飯も食べてみたい・・・ 

  

晴れ舞台  〜「仁義なき戦い」〜

公開日 : 2007年12月28日 11時09分

 名画座(旧作映画専門館)華やかな頃、ひいきの作品が上映される度に、劇場へと足を運ぶ固定ファンがいました。たとえば、“東京流れ者おじさん”。鈴木清順監督「東京流れ者」上映時に、主演の渡哲也と同じ衣装をまとい、エンディング曲をバックに颯爽と映画館の通路を歩いたそうです。今回ご紹介する作品も、30数年の時を経ながら、今でも名画座で特集上映される不朽の名作!

 敗戦の傷跡が生々しく残っている広島県呉市。その廃墟と化した街に一人の男が復員してきました。彼の名は広能昌三。街と同様に人心も荒廃している中、広能は友人たちの抗争に巻き込まれ、人を一人射殺してしまいます。入獄した広能は、塀の中で運命的な出会いが。土井組若頭、若杉寛と意気投合した広能は、兄弟の契りを結びます。やがて、刑期を終え、広島に戻る広能。復興著しい新しい街は、広能の新たな戦いの場でもありました・・・

 従来の「やくざ映画」の形を根本的に覆した本作。利権をめぐり、義理人情を越えて非情に戦う男たちの姿、それは高度経済成長という光の背後に潜んだ、戦後日本のもう一つの真実。また、本作の魅力は当時の東映オールスターせい揃いの豪華キャスティング。菅原文太に梅宮辰夫、それに松方弘樹(「元気がでるテレビ」の松方部長しか知らない世代は必見です)・・・と。昭和の映画史を飾る一作です! 

 12/29(土) ゴールド劇場で「仁義なき戦い」5部作 オールナイト一挙上映! 

  

木を見て・・・ 〜「ダーウィン・アワード」〜

公開日 : 2007年12月16日 17時49分

  生まれてこの方、二度ほど死にかけたことがあります。いや、生まれた時のドタバタも含めれば三度になりますか。幸運なことに、いずれも何とか死線を乗り越えて現在に至っています。事の次第は、恥ずかしく書き記せませんが、もし、死んでいたら、「ダーウィン賞」(馬鹿げた行動で死んだ人に贈られる賞)にノミネートされたかもしれません。   

 

 サンフランシスコ市警の優秀なプロファイラー(犯罪心理分析官)、マイケル。彼の脳裏から離れることができないもの。それは信じられない出来事を起こして華々しく散っていった「ダーウィン賞」受賞者たちの行動。 

「なぜ彼らは、馬鹿な死に方をするのか?」今日も犯罪者の行動を分析しながら、「ダーウィン賞」受賞者へ思いを馳せるマイケル。そんなある日、マイケルは、大失態を。得意の行動分析で連続殺人犯を追い詰めたものの後一歩のところで、犯人の血を見て失神。刑事でありながら、血を見ると失神してしまうという弱点を持っていたのです)。マイケルを同行取材している映画学生は、「報道の客観性」を盾に、犯人を取り逃がす場面を一部始終撮影するだけ。 

「『ダーウィン賞』受賞者たちを保険適用外にすれば、年2200万ドルの支払いをカットできる」 

警察をクビになったマイケルは、「ダーウィン賞」受賞者たちを分析した結果を持って保険会社の入社面接に臨みます。「各地に存在する不可思議な案件を1ヶ月で証明すれば」会社から、その条件を与えられ飛び立つマイケル。相棒はちょっとシニカルな女性調査担当者シリ。一件目は、ジュースの自販機に押しつぶされたエリート社員のケース。単純な事故と思われたそのケースに「ダーウィン賞」の匂いを感じとったマイケルは・・・

  

 「木を見て森を見ず、という言葉がありますが、中には、木どころか、葉っぱを見てしまう人がいます」以前、ラジオでそんな話を聞いたことがあります。一つのことがらにとらわれると周りが見えなくなる「ダーウィン賞」受賞者やマイケルは、「葉っぱ」派なのかもしれません(私もその一員かもしれませんが)。もっとも、「葉っぱ派」の中には、ある一つの分野に秀でた才能を発揮する人もいるとのこと。 

「『ダーウィン賞』の人たちって早死にだけど人生楽しそう!」シリのこの言葉も、ある意味、真理。だけど、長生きしなければ、その才能は・・。時には、森を見ること、そう、周りに気を配ることも大切かもしれません。 

 

たまには〜「転々」〜

公開日 : 2007年11月30日 23時58分

 時折、自転車通勤することがあります。朝早く目覚めた時に。地下鉄
なら10分少々の道のりも銀輪だと約40分弱。しかし、暗闇の車内では
感じとることのできない季節の鼓動を感じとることができます。初夏の芳
しい青葉の匂いに、冬を予感させる澄んだ空気等々。移動のスピードを
落とすことは、人の感受性を豊かにしてくれるのかもしれません。まして
や散歩であったら・・・。 
  
 その秋、大学8年生の竹村文哉は人生最悪の局面を迎えていました。
あと3日で借金84万円を返済しなければ、体を売って払わなければ。ち
ょっとエキセントリックな取り立て人、福原なら本当にやりかねない。まさ
に貞操の危機。しかし、天涯孤独な文哉には頼る術がありません。どう
なる文哉?   
 そして迎えた期限の前日。   
「借金をチャラにしてやってもいいよ」文哉は福原から奇妙な提案をうけ
ます。 条件は、福原と2人で東京を散歩すること。散歩の期間は気分
次第。そして目的地は霞ヶ関。怪しげな提案だけれども、他に術のない
文哉は、その提案を受け入れることに。奇妙な男2人の東京散歩が始ま
りました。   
「でも、どうして霞ヶ関に?」   
「警視庁に行く。自首するんだ。妻を殺してしまったんだ」   
 散歩の途中で露わになってくる福原のちょっと不思議な私生活。そして、
散歩の途中て出会う、風変わりな人々との交流。家庭の味を知らない文
哉にとってそれは微妙な感情抱かせました。やがて、散歩の目的地、桜
田門(警視庁)に一歩一歩近づいていきますが・・・。   
    
 
 何かと慌ただしい日々が続く中、私の息抜きも散歩です。途中で立寄る
喫茶店でコーヒーを片手に文庫本のページをめくる時、ささやかな幸福を
感じていました。しかし、この作品を観終えた後、何だか人恋しい気持ちに
なりました・・・。 
そう言えば、ホットコーヒーが美味しい季節になりましたね。  

メッセージ  〜「君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956」〜

公開日 : 2007年11月08日 18時39分

  中学二年の秋、文化祭の準備で日が暮れるまで学校に残っていた時のことでした。作業も終わってやれやれと、校庭に出てきたら、花壇の脇に不気味な物体が転がっていました。それは月光に照らされた白く丸い物体。表面には、黒い穴のようなものが二つ三つ。 「骸骨!?」恐る恐る近づいてみると、それはサッカーボールでした・・・ そう言えば、サッカーの起源は、敗軍の将や兵士の生首を蹴っていたことにはじまる、という説を聞いたことがあります。スポーツの歴史には、悲しい歴史が秘められているのかもしれません。本作も悲しみを背負ったスポーツの実話をもとにした物語。 

  

  物語の舞台は、第二次大戦終結から十年余りの月日が流れたハンガリーの首都、ブタベスト。その景観から「ドナウの真珠」と称された美しい河畔の街は、重苦しい空気に包まれていました。ソ連の強い影響下にあったハンガリー政府は、厳しい監視体制で市民の自由を奪っていたのです。そんな中、立ち上がったのは、若者たちでした。 

  「ともに闘いましょう! 自由のために」学生たちの先頭に立ったのは、女子学生、ヴィキ。危険を顧みずに先頭を走る彼女の姿に、一目惚れした男子がいました。メルボルン五輪出場を間近にひかえたハンガリー水球チームの選手、カルチ。彼は、ヴィキと一緒にいたい、その一心で学生デモに参加します。しかし、浮かれた彼の気持ちは、秘密警察が放つ銃弾によって吹き飛ばされます。血を流して倒れる市民たち。「もう、無関心ではいられない!」カルチの心に母なる大地への思いが、そして愛する人への熱い思いが芽生えてきました。やがて、デモ隊を鎮圧するためにソ連軍の姿も。緊張度が増すブタベストの街。そんな中、五輪開催の時は刻々と近づいてきます。ハンガリーチームのライバルは、奇しくもソ連チーム。自由のためにヴィキは銃を。そしてカルチは水球ボールを手にします。ハンガリーの未来は、そして二人の恋の行方は・・・ 

  

  この秋、ピクシー(妖精)の愛称で親しまれたドラガン・ストイコビッチの名前が再び話題になっています。名古屋グランパス監督就任をめぐって。本作を観終えた後、彼がアンダーシャツに記した空爆に抗議するメッセージ、その文字が脳裏を過ぎりました・・・