つながり 〜「きみにしか聞こえない」〜
公開日 : 2007年06月23日 09時08分
「人は冬の日のハリネズミのようなものだ」 これはドイツの哲学者、アルトゥル・ショーペンハウアーの言葉です。離れすぎると寒い、しかし近づき過ぎると針が刺さって痛い、適当な距離を保って付き合わなければ、という意味だと言われています。たしかに、人間関係ほど難しいものはありません。時には、ふとしたことから自他ともに心の傷を背負ってしまうことも・・・
授業中だと言うのに、今日も教室には携帯電話の着信音が鳴り響きます。友だちや恋人とつながっている同級生たち。そんな中、リョウはいつもひとりぼっち。携帯を持っていない、いや、持っても話すべき相手のいない彼女は、いつも愛用の腕時計を眺めては自分だけの時を過ごしていました。「わたしなんかいなくなっちゃえばいい・・・」 幼い頃に負った心の傷のために、自分の殻に閉じこもってしまったリョウ。そんなある日、彼女は、公園でおもちゃの携帯電話を拾います。本物の携帯とはつながらないはずなのに、なぜか鳴り響く着信音。そして、聞こえてくる若い男、シンヤの声。それは、リョウを外の世界へと誘ってくれる声でありました。恐る恐る足を踏み出すリョウ。その行き先には・・・
「万有引力とは ひき合う孤独の力である」これは、本作の中で引用されている谷川俊太郎の詩「二十億光年の孤独」の一節。人は、臍の緒を切られた瞬間、生まれた時から孤独な存在であることを運命づけられています。しかし、だからと言って人は一人では生きてはいけない。孤独であるから故に、人は互いを求め合うのではないでしょうか。産声、それは、人としての最初のラブコールなのです。
「もう一人じゃないよ」 本作を観終えた後、シンヤの心の声が、何度も脳裏に響きました。孤独を感じても悲しむことはありません。そう、孤独というのは、出会うための出発点なんだから・・・