耳をすますと・・・〜「天然コケッコー」〜

公開日 : 2007年08月16日 08時03分

 ふと耳にした物音に誘われ、過去の記憶が蘇ってくることはありませんか? 蝉の鳴き声を聞くと、夏休みの日々が。そして、伊吹おろしが戸をたたく音からは、お茶の間の炬燵で食べた蜜柑の味・・・と、遠き日の思い出が脳裏に浮かびます。それらの記憶は、せわしない日常の生活に、ひと時の安らぎをもたらしてくれます。そして、本作も。

「ウェルカム 観迎!! 大沢広海さん」(劇中表示のママ) 黒板に大きく書かれた白墨文字。今日、この村の学校に七人目の生徒、そう、転入生がやってきます。中学二年の右田そよにとっては、初めての同級生です。生まれた時から、村中の人々と家族ぐるみの付き合いで、一人の出来事は、みんなの出来事。そんな親密な空間にやってきたのは、都会育ちの洗練された少年。虫の音が涼しげな音色を奏でる中、そよの体内では今までとは違った鼓動音が木霊しているようでした。それは、新しい季節の始まりでもありました・・・

 思い出される過去の記憶は、ストーリーというよりも、断片的なものが多いと思います。しかし、それは、今、現在進行形で進んでいる人生という名のストーリーに、味を加えてくれるスパイスなのではないでしょうか、本作を観終えた後、ふと、そう思いました。