たまには〜「転々」〜

公開日 : 2007年11月30日 23時58分

 時折、自転車通勤することがあります。朝早く目覚めた時に。地下鉄
なら10分少々の道のりも銀輪だと約40分弱。しかし、暗闇の車内では
感じとることのできない季節の鼓動を感じとることができます。初夏の芳
しい青葉の匂いに、冬を予感させる澄んだ空気等々。移動のスピードを
落とすことは、人の感受性を豊かにしてくれるのかもしれません。まして
や散歩であったら・・・。 
  
 その秋、大学8年生の竹村文哉は人生最悪の局面を迎えていました。
あと3日で借金84万円を返済しなければ、体を売って払わなければ。ち
ょっとエキセントリックな取り立て人、福原なら本当にやりかねない。まさ
に貞操の危機。しかし、天涯孤独な文哉には頼る術がありません。どう
なる文哉?   
 そして迎えた期限の前日。   
「借金をチャラにしてやってもいいよ」文哉は福原から奇妙な提案をうけ
ます。 条件は、福原と2人で東京を散歩すること。散歩の期間は気分
次第。そして目的地は霞ヶ関。怪しげな提案だけれども、他に術のない
文哉は、その提案を受け入れることに。奇妙な男2人の東京散歩が始ま
りました。   
「でも、どうして霞ヶ関に?」   
「警視庁に行く。自首するんだ。妻を殺してしまったんだ」   
 散歩の途中で露わになってくる福原のちょっと不思議な私生活。そして、
散歩の途中て出会う、風変わりな人々との交流。家庭の味を知らない文
哉にとってそれは微妙な感情抱かせました。やがて、散歩の目的地、桜
田門(警視庁)に一歩一歩近づいていきますが・・・。   
    
 
 何かと慌ただしい日々が続く中、私の息抜きも散歩です。途中で立寄る
喫茶店でコーヒーを片手に文庫本のページをめくる時、ささやかな幸福を
感じていました。しかし、この作品を観終えた後、何だか人恋しい気持ちに
なりました・・・。 
そう言えば、ホットコーヒーが美味しい季節になりましたね。