生きる〜「休暇」〜
公開日 : 2008年06月14日 23時04分
「人を善人と悪人に分けることはできません。その時によってどちらにもなりうるから」 これは、チェコの映画監督、イジー・メンツェルの言葉です。人は、ふとしたことをきっかけに過ちを犯すことがあります。そして、その罪を償うためには・・・
のどかな山村を走る列車に一組の親子が佇んでいます。夫の平井と、妻の美香、そして連れ子の達哉。平井と美香は、結婚式をあげたばかり。しかし、平井の表情はさえません。連れ子が、なかなか懐いてくれないから? 違います。一昨日の出来事が平井の脳裏に焼きついてはなれないからです。平井の職業は刑務官でした。
強盗殺人を犯し、刑の執行を待つ金田。鉛筆画を趣味にしている彼は、時間を見つけてはスケッチを続けます。その穏やかな表情は、とても凶悪事件を起こした人物とは思えません。罪を認め、悟りの境地をひらいたからでしょうか。罪人たちを社会復帰させるための矯正職たる刑務官。その高い使命感を持って働き続ける平井たちは、金田と接していくうちに不思議な情がわいてきます。その気持ちは金田も同じでした。金田も、平井が結婚することを聞き、平井にささやかなプレゼントを贈ります。それは、平井と奥さんを描いた鉛筆画でした。
そんなある日、法務大臣からの命令書が刑務所に届けられます。それは金田への死刑執行命令書。「死刑執行の立ち会い、その支え役に就いたものには特別休暇が与えられる」という話も同時に告げられます。執行日は結婚式の前日。すでに有給休暇を使いはたしていた平井には、新婚旅行の休暇はありません。その時、彼が選んだ道は・・・
連日のように報じられる悲惨な事件・事故。起きてしまったことを覆すことはできません。事態を正視し、償わなければなりません。生あるならば、その限り真摯に生き続けることなのではないでしょうか。
来年からは一般市民が裁判に参加する制度も始まります。また、死刑制度をめぐる論議も盛んになっています。この今、是非とも多くの人に観ていただきたい作品です。