メッセージ  〜「君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956」〜

公開日 : 2007年11月08日 18時39分

  中学二年の秋、文化祭の準備で日が暮れるまで学校に残っていた時のことでした。作業も終わってやれやれと、校庭に出てきたら、花壇の脇に不気味な物体が転がっていました。それは月光に照らされた白く丸い物体。表面には、黒い穴のようなものが二つ三つ。 「骸骨!?」恐る恐る近づいてみると、それはサッカーボールでした・・・ そう言えば、サッカーの起源は、敗軍の将や兵士の生首を蹴っていたことにはじまる、という説を聞いたことがあります。スポーツの歴史には、悲しい歴史が秘められているのかもしれません。本作も悲しみを背負ったスポーツの実話をもとにした物語。 

  

  物語の舞台は、第二次大戦終結から十年余りの月日が流れたハンガリーの首都、ブタベスト。その景観から「ドナウの真珠」と称された美しい河畔の街は、重苦しい空気に包まれていました。ソ連の強い影響下にあったハンガリー政府は、厳しい監視体制で市民の自由を奪っていたのです。そんな中、立ち上がったのは、若者たちでした。 

  「ともに闘いましょう! 自由のために」学生たちの先頭に立ったのは、女子学生、ヴィキ。危険を顧みずに先頭を走る彼女の姿に、一目惚れした男子がいました。メルボルン五輪出場を間近にひかえたハンガリー水球チームの選手、カルチ。彼は、ヴィキと一緒にいたい、その一心で学生デモに参加します。しかし、浮かれた彼の気持ちは、秘密警察が放つ銃弾によって吹き飛ばされます。血を流して倒れる市民たち。「もう、無関心ではいられない!」カルチの心に母なる大地への思いが、そして愛する人への熱い思いが芽生えてきました。やがて、デモ隊を鎮圧するためにソ連軍の姿も。緊張度が増すブタベストの街。そんな中、五輪開催の時は刻々と近づいてきます。ハンガリーチームのライバルは、奇しくもソ連チーム。自由のためにヴィキは銃を。そしてカルチは水球ボールを手にします。ハンガリーの未来は、そして二人の恋の行方は・・・ 

  

  この秋、ピクシー(妖精)の愛称で親しまれたドラガン・ストイコビッチの名前が再び話題になっています。名古屋グランパス監督就任をめぐって。本作を観終えた後、彼がアンダーシャツに記した空爆に抗議するメッセージ、その文字が脳裏を過ぎりました・・・

  

 

背中は・・・ 〜「サウスバウンド」〜

公開日 : 2007年10月24日 10時43分

 まだまだ若い若い、そう思ってはいるものの、押し寄せる年波を実感させられる時があります。それは学生時代の友人と再会した時のこと。「おっさん、おばさんになったものだなぁ」 思わず苦笑が漏れてしまいます。もっとも、相手の顔は鏡にうつった自分自身でもあるのですが。そして、それ以上に痛感させられるのが、考え方がみんな“大人”になってしまったこと。「今の若い奴ときたら・・」 酒を飲むとそんなため息が漏れてきます。そんな疲れ切った、“大人”たちの目を醒ませてくれる男が現れました、それは、本作の主人公!

 

 「ナンセンス!」 これは上原二郎の父、一郎の口癖です。納得いかないことがあると、その一言でばっさり切り捨てます。と言っても、傍らで見ている二郎は、ハラハラドキドキ。なぜなら、一郎が立ち向かっているのは、二郎の通う小学校の先生や、お役所の人たち。「お父さん! 恥ずかしいから・・」 しかし、そんな言葉に耳を貸すお父さんではありません。インターネットで調べてみると、お父さんは若い頃、とある運動のリーダーだったとのこと。そんなお父さんを、優しく見守るお母さんも「ジャンヌ・ダルク」という別名が。どうやら、うちの両親は、他の家とはちょっと違うみたい。そんなある日、お母さんは宣言します。「我が家は、沖縄の西表島に引っ越すことにします!」 そこはお父さんの故郷。はたして、南の島でどんな騒動、いや出来事が待っているのでしょうか・・・

 

 最近、新聞やニュースで盛んに報じられるさまざまな不祥事。“大人”たちの起こした犯罪は目を覆いたくなるものばかり。もっとも、実社会では、悪いと思っていても、勇気を出して異議を唱えるのが難しいのも事実です。しかし、そんな世の中に響く「ナンセンス!」の言葉。それは、今の世の中から消えつつある、頑固親父の力強い背中のようでした・・・

行き先は・・・ 〜「パンズ・ラビリンス」〜

公開日 : 2007年10月13日 22時18分

  心理学用語に“昇華”という言葉があります。それは、人間の心の中に潜んでいる欲求が、社会的に認められない時、その欲求のエネルギーを別の形(例えば、スポーツや文化活動)に向けさせるという意味とのこと。本作の主人公、少女オフェリアにとって、おとぎ話の世界は、“昇華”だったのでしょうか・・・  

 

 1944年、フランコ将軍圧政下のスペイン。自然豊かな山道を高級車が走ります。乗っているのはお腹の大きなお母さんと、おとぎ話の本を手にしたオフェリア。オフェリアにとって、緑豊かな山の中は、おとぎ話への入り口のよう。そして、彼女の目の前に妖精のような生き物も。しかし、その自然を覆う銃声と軍靴の響き。オフェリアの新しいお父さんはフランコ軍の大尉でした。豪華な生活とは裏腹に、大尉が心配しているのはお母さんのお腹の子どもだけ。そして、今日も山の中では大尉率いる軍隊の殺戮が。オフェリアにとって、心の支えは、おとぎ話の世界。そんなある日、彼女の前に再び妖精が現れます。自由を求めて立ち上がったゲリラ軍と、大尉軍との戦いが激しくなる中、オフェリアは魔法の王国へと一歩、足を踏み出すのでした。  

 

 “昇華”と混同されやすいものに“現実逃避”という言葉があります。本作で、オフェリアは、“現実逃避”でおとぎ話の世界へと走ったのでしょうか? 確かに、きっかけはそうかもしれません。しかし、彼女のとった最後の選択は逃避ではなく、困難に立ち向かい、新しき生命への愛を貫いたものでした。その結果として・・・ 

  物語のラスト、オフェリアの姿から、人を愛することの大切さ、そして、命の尊さが地球の重みのように伝わってきました。

秋といえば

公開日 : 2007年10月02日 18時35分

 

  暑い暑い、と思っていたらもう十月。朝夕はさすがに肌寒く感じるようになりました。夜、耳をすませば鈴虫の鳴き声も。今年は、記録的な猛暑でしたが、季節は一歩一歩、秋へと進んでいるようです。 

 秋といえば紅葉、紅葉と言えば楓(メイプル)ということで、スターキャット直営映画館のカフェでは、季節メニューとして、メイプルシロップたっぷりの「メイプルソフトアイス」と、メイプルの素朴な甘みと生クリームのまろやかさが見事に調和した「メイプルラテ」の販売を始めました。映画と一緒に、心安らぐ時空を体感してみてはいかがですか。 

 ところで、桃というと春のイメージがありますが、秋の季語の中に「桃の実」があります。そう、桃の収穫期は主に晩夏から秋。まだまだ日中は汗ばむ日が続きますが、そんなときは「100%ピーチジュース」がおすすめですよ。

いつか、きっと  〜「ミス・ポター」〜

公開日 : 2007年09月21日 20時33分

  

 少子化が進む現在、30歳を過ぎた独身者は少々肩身の狭い境遇に置かれているようです(私もその一人ですが)。「いい年をして」 そう言われてもね・・・ ただ、自分の信じた道を真面目に生きているだけなのに。そんな時、心の中の暗雲を吹き払ってくれる作品と出会いました。それが本作。

 

 「アーティストになりたい!」 その思いを胸に秘めながら、今日も絵筆を握る女性がいました。絵筆が進むとともに、総天然色のうさぎたちが四角い画用紙の中を所狭しと駆け回っていきます。彼女の名は、ビアトリクス・ポター。映画の舞台は、20世紀初頭のイギリス。まだ、封建的な空気が世の中を覆っている時代でした。「こんな良縁を・・・」 縁談を断り続ける娘を嘆く母親。しかし、ポターはさびしくありません。大きな夢があり、また、“友だち”(絵の中のうさぎをはじめとする動物たち)が傍らでいつも微笑んでくれているから。そんなある日、彼女に大きなチャンスがめぐってきます。彼女の描いた絵本が出版されることになったのです。ポターの編集担当者は、ノーマン。彼にとっても、ポターの仕事は大きなチャンスでした。はじめて任された編集の仕事、これを成功させれば。 ひたむきに二人三脚で絵本をつむぎだしていくポターとノーマン。やがて、二人の心の中にも、もう一つのストーリーが生み出されていきました。それは恋という名の物語でした・・・

 

  「この年になると、臆病になるね」 独身の友人仲間と飲んでいた時、そんな言葉がもれてきました。たしかにそうかもしれません。しかし、愚痴っていても何にもなりません。そう、夢をあきらめず、正直にまっすぐ進んでいけば、いつかきっと・・・  本作を観終えた後、その思いを強くしました。

強ければ強いほど・・ 〜「HERO」〜

公開日 : 2007年09月14日 14時42分

 

 ドラマの醍醐味、それは対決ではないでしょうか? 恋敵との対決、極悪犯人との対決。対戦相手の強さ、そう、主人公の前にそびえる壁が高ければ高いほど、観る人は、手に汗握り、主人公の姿に感情移入していくのではないでしょうか? 今回、お茶の間で人々を魅了した登場人物の前に史上最大の敵が現れました・・・

 6年ぶりに地検城西支部に戻ってきた久利生公平。お堅い検察庁の中で異彩を放つ久利生。相変わらず通販番組にはまっている彼が、赴任早々に購入したのは、スペイン・プロサッカーのオフィシャルガイドブック(スペイン語が分からない久利生は、スペイン語学習漬けの日々に)。そんな久利生の姿をよそに、城西支部の面々は相変わらずマイペース。しかし、直属の女性事務官、雨宮の様子が少し変。よそよそしい態度をとる雨宮。その一方で香水の匂いも。何かあったのかな・・ 鈍感な久利生のもとに一つの事件が。それは、すぐ解決するはずの傷害致死事件。しかし、公判が始まるとそこに現れたのは日本有数の敏腕弁護士。そのバックには有力政治家の姿も。「こんどしくじったら、地方での転勤だけではすまないかも」そうささやく上司。果たして、久利生はこの危機をを乗り越えることができるのでしょうか? そして、久利生と雨宮の二人の不器用な恋の行方は・・・ 

 本作の魅力は、敏腕弁護士役の松本幸四郎と木村拓哉の対決ですが、それとともに興味を惹いたのは、雨宮役、松たか子と幸四郎の親子対決。親子を感じさせない二人の姿に役者魂を垣間見たような気がしました。今度は、時代劇で二人の対決を観てみたいな、映画を観終えた後、ふと、そう思いました(当然、木村拓哉も共演で)。

忘れ物発見! それは・・・ 〜「恋するマドリ」〜

公開日 : 2007年09月03日 11時49分

  みなさん、部屋の掃除はしっかりしていますか? 普段、仕事やら何やらにかまけて、ままごと程度の掃除しかしていない私の部屋は、大変な状態に。そんな私も大掃除をすることがあります。それは、引越しの時。床を拭き拭き、荷物の整理をしていると本棚の後ろから、無くしてしまった大切なものがでてきたりします。思わず手にとって、物思いに耽ったり・・・と。本作も、始まりはお引越し。 

 

 美大生ユイの引越しは、同居している姉の出来ちゃった婚がきっかけでした。「一緒にお店を出そうとした約束は!」 そんなユイの言葉に耳をかさず、姉は夫となる人とともに新居へと。そこで、ユイは心機一転、一人暮らしを始めることに。場所は、美大近くの街。都会の中だけど、窓から見える空は綺麗です。昔は、旧宿場町であったとのこと。両隣の部屋には、人情味あふれるおばあさんと、無愛想な今時のお姉さん。そんなユイの新居に、大きな忘れ物がありました。それは前の住人の恋の思い出。どうやら、その恋のお相手は、上の部屋の住民のよう。広い都会を舞台に、ささやかな恋の冒険が始まりました・・・ 

 

 名古屋に戻って三回目の夏が過ぎ去りました。そろそろ、引越しをしようかな、鈴虫の鳴き声を聞きながら、ふと、そう思いました。 

ロスタイム〜「22才の別れ」〜

公開日 : 2007年08月26日 12時10分

  青年と中年の境界線は、何歳なのでしょうか。30代半ば、それとも40歳になった時?もっとも、それはその人の生活や仕事の環境によって変わってくるはずで、一概に何歳と断じるのは難しいのではないかと思います。未来のことよりも過去のことを振り返ることが多くなった時、それが中年への第一歩ではないでしょうか。本作の主人公はまさに境界線を一歩、踏み出そうとしていました。一曲の歌に導かれて。

 

 川野俊郎、44歳。貿易会社で働く彼は、いまだに独身ではあるけれど、それなりに優雅な生活を送っています。そして、一緒にお酒を飲む仲の良い女友だちもいました。しかし、心のどこかに、ちょっと空洞がありました。そう、何か忘れ物をしたような空虚感が。そんなある日、コンビニの女性店員が口ずさむ歌が、俊郎の心の隙間に染み込んできました。そして蘇る22年前の記憶。その曲は「22才の別れ」でした・・
 

「30代も半ばを過ぎると、いろいろなしがらみがつきまとい、昔のように冒険をする気力が失せてくるよ・・」ある時、友人がそうぼやいていした。「ある意味、残りの人生はロスタイムかな」とも。ロスタイムだっていいじゃないですか。最後の最後まであきらめずに、ボールを追いかけていけば、逆転決勝ゴールの可能性もあるのだから。

 

耳をすますと・・・〜「天然コケッコー」〜

公開日 : 2007年08月16日 08時03分

 ふと耳にした物音に誘われ、過去の記憶が蘇ってくることはありませんか? 蝉の鳴き声を聞くと、夏休みの日々が。そして、伊吹おろしが戸をたたく音からは、お茶の間の炬燵で食べた蜜柑の味・・・と、遠き日の思い出が脳裏に浮かびます。それらの記憶は、せわしない日常の生活に、ひと時の安らぎをもたらしてくれます。そして、本作も。

「ウェルカム 観迎!! 大沢広海さん」(劇中表示のママ) 黒板に大きく書かれた白墨文字。今日、この村の学校に七人目の生徒、そう、転入生がやってきます。中学二年の右田そよにとっては、初めての同級生です。生まれた時から、村中の人々と家族ぐるみの付き合いで、一人の出来事は、みんなの出来事。そんな親密な空間にやってきたのは、都会育ちの洗練された少年。虫の音が涼しげな音色を奏でる中、そよの体内では今までとは違った鼓動音が木霊しているようでした。それは、新しい季節の始まりでもありました・・・

 思い出される過去の記憶は、ストーリーというよりも、断片的なものが多いと思います。しかし、それは、今、現在進行形で進んでいる人生という名のストーリーに、味を加えてくれるスパイスなのではないでしょうか、本作を観終えた後、ふと、そう思いました。

バリアフリー 〜「ヘレンケラーを知っていますか」〜

公開日 : 2007年08月10日 18時46分

 「詩とメルヘン」という雑誌をご存知ですか? それはアンパンマンで有名な、やなせたかしさん編集の読者参加型雑誌でした。この雑誌を知ったのは高校生の時、美術の授業で。以来、愛読者というわけではないけれど、本屋で見かけるたびには立ち読みしていたものでした。そんなある日、その雑誌に金子みすゞさんの童謡詩が紹介されていました。当時、人間関係に悩んでいた私の乾いた心に、その詩の一行一行がオアシスの湧き水のようにしみ込んでいきました・・・  

 「明るいほうへ 明るいほうへ」 今まさに、一人の少年が自らの命を絶とうとしている瞬間のことでした。山の中にひっそりと建っている一軒家から、老女の声が聞こえてきます。それは、金子みすゞさんの詩。ふと、その老女の声に耳を澄ます少年。それが、二人の出会いでした。若い時に、聴覚と視覚を失った彼女の生きてきた半生、それは、現代っ子の少年の想像を絶するものでした・・・   

 ここ数年、公共施設や娯楽施設など、ハード面でのバリアフリーは確実に進んでいます。しかし、それだけで良いのでしょうか? 作中にでてくる「みんなちがってみんないい」このみすゞさんの詩を聞いた時、それぞれの違いを認め合うとともに、互いのハンディを補っていく心のバリアフリーの大切さを実感しました。 

  

早起きは

公開日 : 2007年08月02日 23時19分

 8月になりました。学校は夏休みの真っ最中。大人たちもお盆休みまであとわずか。夏休みと言えば、早起きのイメージが脳裏をよぎります。ラジオ体操に、海水浴や学校の山登り等々。普段、少しでも布団にしがみついていたい、そう思っている人も、夏の行楽に胸をときめかせた記憶はありませんか? そんな夏休みの早起きさんににちょっとお知らせ。
 この夏、ゴールド・シルバー劇場では朝9時30分から1回、最近の話題作をリバイバル上映しています。そして、8月4日(土)から、日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作「フラガール」を公開します。炭鉱閉山という困難にぶつかる人々。しかし、彼女らはそれを乗り越えようと、ひたむきに生きる道を選びます。その姿は、観る人に「再チャレンジ」の勇気を与えてくれます。また、南海キャンディーズのしずちゃんにも注目(キャラクターと一味違った役どころも魅力です)。10日(金)までの一週間限定上映。入場料も当日1,000円(シネクラブ会員は何と500円!)。夏休みの早起きは三文のお得!!