今からでも 〜名古屋シネマ・フェスティバル2007〜

公開日 : 2007年07月25日 09時03分

 音楽の趣味は人によってさまざまですが、私は癒し系のイージーリスニングの曲が好きです。例えば、喜多郎の「シルクロード」や、姫神の「海道を行く」とか。これらの曲は紀行番組のBGMにも使われることが多く、曲を聴くだけで旅情をそそられます。そんなお気に入りの曲の中の一つに、NHK「関東甲信越小さい旅」のテーマ曲があります。この曲を作曲したのは大野雄二さん。何を隠そう、宮崎駿監督の出世作「ルパン三世 カリオストロの城」の音楽を担当しているアーティストです。 

 「カリオストロの城」の魅力は、多くの映画評論家が語っているのであまり言及しませんが、宮崎監督の登場人物一人一人に気を配った繊細な演出とともに、悲しみや切なさ、そして寂しさを心の母国語のように暖かく包んでくれる曲の数々が、観る人の心の琴線に触れているのではないでしょうか。 

 名古屋シネマ・フェスティバル2007「カリオストロの城」の最終上映は、7/27(金)の夜8時30分から伏見ミリオン座にて。当日は、大野雄二さんのライブ風景を収録したミニ映像も上映いたします。この機会に、ルパンとともに異国へと旅してみませんか。

脇役〜「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」〜

公開日 : 2007年07月15日 17時40分

  映画やテレビドラマを観るときに、気にかけていることが一つあります。それは、脇役の人々の描かれ方。どんなに面白いストーリー展開であっても、また、迫力ある映像であっても、脇役の存在感が薄い作品には、いまいち感情移入できません。はたして本作は・・・

 「あたしは絶対に女優になるのよ!」 自分には特別な才能がある、そう思い込んでいる和合澄伽。高校の演劇部で自分が光らないのは、他の部員が下手だから! 田舎の町だから! そう信じている澄伽は、18歳で上京します。東京では明るい未来が待っているはずだった・・・  それから、4年の月日が流れます。そんなある日、彼女は両親の突然の死で故郷に戻ることに。どうやら、まだ大女優になる夢は叶っていないよう。東京で何かあったようで、しばらく実家で暮らすことになる澄伽。しかし、それは和合家にとって大騒動の始まりだった・・・ 特に妹の清美にとって。それは清美が4年前に,描いた漫画がきっかけでした・・・ 

 本作の見所は、佐藤江梨子扮する澄伽のぶっ飛んだキャラクターですが、それ以上に存在感あるのが脇役陣。漫画を描くの清美(佐津川愛美)の鬼気迫る表情にも惹かれますし、何も状況が分からず戸惑いながらも、持ち前の天然さで前向きに生きている兄嫁の待子(永作博美)の笑顔にも心洗われます。やっぱり、物語って主人公だけでは面白くない! その思いを新たにしました(これは人生にもあてはまるのかもしれませんね)。

腹ごしらえ

公開日 : 2007年07月08日 08時32分

 観劇、映画鑑賞、さらにスポーツ観戦などで、飲んだり食べたりするのも楽しみの一つではないでしょうか。これも古くから伝わる日本の文化と言われています。江戸時代の人々の生活をいきいきと描いている古典落語の中に、鍋を囲みながらお芝居を楽しむ庶民の様子をユーモラスに描いたものもありました。他の人への配慮を考えた上、そう、音をたてたり、騒いだりしなければ、飲食も良いのでは、と思います。
  スターキャット直営館には、さすがにお鍋はありませんが、おいしいパンが映画のお供をしてくれます。お薦めは、定番ではあるけれど丹波黒豆あんぱん。他のお店のあんぱんとは一味違った、抑えのきいたシックな甘さが魅力です。お値段も手ごろ。そして最近のマイブームは海老カツサンド。歯ごたえのある小エビと柔らかい玉子が口の中で、美味しいハーモニーを奏でます。
 たまには、映画を観ながらゆっくりと優雅なブレッドランチはいかがですか?

夏休み〜「サイドカーに犬」〜

公開日 : 2007年07月03日 10時27分

 早いもので、今年も半分が過ぎました。梅雨が明ければ夏。子どもの頃、この7月の声を聞くと(学校では短縮授業が始まります)、わくわくした気持ちを抑えることができませんでした。そう、もうすぐ夏休みがはじまるのです。40日間という長い休み。今年の夏休みには何かが起きるかも。その予感に、胸を時めかしていたのです。
 
 「今朝、どの靴を履いて良いのかわからなくなった」 不動産会社で営業をしている薫、30歳。ずっと続いている変わらない日々、そしてつまらない時間。昨日も、些細なことでクレームが。ふと、会社を休みたくなった薫は、行きつけの釣堀に向かいます。そこで、一人の女の子と出会う薫。「何年生?」「四年生・・・」。薫の脳裏に、平凡とは程遠い、強烈なひと夏の思い出が浮かんできました・・・
 「20年前の刺激的な夏は、母の家出で幕を開けた・・・」 小学校四年生の薫は、両親と弟との四人暮らし。平凡な日々が、父の脱サラがきっかけで崩れていきます。そんな夫に愛想をつかせて家を出る母。代わりに家に来たのは、怪しげな店から貰ってきたパックマン(ゲーム機)と、ヨーコさんという豪放磊落な若い女の人。夜になると、怖そうな父の友人たちがやってきて麻雀大会が。「お母さんがいたら、きっと怒るわ」不安げな薫の横で、弟はパックマンとヨーコさんが買ってくれた麦チョコの山盛りに大喜び。 そんな薫も、ヨーコさんの不思議な魅力に次第に引き込まれていきます。そして、この夏休み、薫は三つの初体験を。一つは母から禁じられていたコーラを飲んだこと。二つ目は、自転車に乗ること。そして三つ目は・・・
                                          
 大人になると、なかなかとれないのが長期の休み。あわただしく、それでいて単調な日々の中から、ささやかな心の休暇場所(薫にとっては釣堀でした)を見つけること、それが生きていく上で大切なのかもしれませんね。私にとってささやかな休暇の過ごし方、それは電車の1日乗車券を買って、ぶらりと出かけることです・・・

つながり 〜「きみにしか聞こえない」〜

公開日 : 2007年06月23日 09時08分

 「人は冬の日のハリネズミのようなものだ」 これはドイツの哲学者、アルトゥル・ショーペンハウアーの言葉です。離れすぎると寒い、しかし近づき過ぎると針が刺さって痛い、適当な距離を保って付き合わなければ、という意味だと言われています。たしかに、人間関係ほど難しいものはありません。時には、ふとしたことから自他ともに心の傷を背負ってしまうことも・・・

 授業中だと言うのに、今日も教室には携帯電話の着信音が鳴り響きます。友だちや恋人とつながっている同級生たち。そんな中、リョウはいつもひとりぼっち。携帯を持っていない、いや、持っても話すべき相手のいない彼女は、いつも愛用の腕時計を眺めては自分だけの時を過ごしていました。「わたしなんかいなくなっちゃえばいい・・・」 幼い頃に負った心の傷のために、自分の殻に閉じこもってしまったリョウ。そんなある日、彼女は、公園でおもちゃの携帯電話を拾います。本物の携帯とはつながらないはずなのに、なぜか鳴り響く着信音。そして、聞こえてくる若い男、シンヤの声。それは、リョウを外の世界へと誘ってくれる声でありました。恐る恐る足を踏み出すリョウ。その行き先には・・・

 「万有引力とは ひき合う孤独の力である」これは、本作の中で引用されている谷川俊太郎の詩「二十億光年の孤独」の一節。人は、臍の緒を切られた瞬間、生まれた時から孤独な存在であることを運命づけられています。しかし、だからと言って人は一人では生きてはいけない。孤独であるから故に、人は互いを求め合うのではないでしょうか。産声、それは、人としての最初のラブコールなのです。

 「もう一人じゃないよ」 本作を観終えた後、シンヤの心の声が、何度も脳裏に響きました。孤独を感じても悲しむことはありません。そう、孤独というのは、出会うための出発点なんだから・・・

伝えたい! 〜「しゃべれどもしゃべれども」〜

公開日 : 2007年06月12日 10時03分

 思いを伝えることの難しさ、それをしみじみと実感したのは、初めて人を好きになったときのことでした。その人の前に出ると、舞い上がってしまい、しゃべりすぎてしまったり、ある時は自己嫌悪で無口になってしまったり・・と。今、思い出すだけで恥ずかしい気持ちになってしまいます。本作を観ていたら、その頃のときめきの鼓動がよみがえってきました。

  

 「師匠の噺が好きだから」 その思いで、落語家の道を歩みはじめた三つ葉。でも、駆け出しの彼にとって、師匠の噺はまだまだ高嶺の花。足元にも及びません。と言っても、修業仲間の柏家ちまきのように、今風の新作落語で売り出すことは、古典落語を愛する三つ葉にはできないこと。今日も、閑散とした寄席で、古典を続ける三つ葉。「どうしたら師匠のようになれるのか?」   そんなある日、三つ葉は、ひょんなことから話し方教室の先生に。「話すことが商売でしょ!」 そう言われても、自分自身が噺に迷っているのに。しかも、生徒は個性的な面々。関西弁が理由でクラスで孤立している根っからの関西児・優と、美人なのに無愛想な五月、それに強面な外見とは裏腹にシャイな野球解説者・湯河原。 果たして、話し方教室の行方は?  そして、三つ葉の話芸は?   

 本作の見所は、何と言っても、一門会で三つ葉演じる「火焔太鼓」(昭和の名人、五代目古今亭志ん生の十八番)。国分太一演じる、三つ葉の熱演もさることながら、この三つ葉を見つめる五月の視線にも注目です。

 

  「好きなことから逃げたら一生後悔する!」 何かと、息苦しい世の中ですが、本作を観終えた後、一歩一歩、道を歩んでいくことの大切さを、時には戸惑ったり、悩んだりしながらも進んでいくことの大切さを痛感しました。そう、人生というのは一つのメッセージであり、それを伝えていくのが生きることなのではないでしょか。

 

お得です

公開日 : 2007年05月21日 19時43分

「料金が高い!」

映画館で働いていると言うと、多くの人はそう言います。

確かに、アメリカに比べると高いかもしれません。しかし、ここ十年近くの間、当日一般料金は値上げをしていません。JRもそうだよ! って言われるかもしれませんが・・・

 そこで今日は、お得な料金で映画が観れるサービスを紹介!

まずはサービスデー。毎月1日は、当日料金が1,000円均一。また、伏見ミリオン座では、オープン記念日の17日も1,000円均一です。女性の方は、毎週木曜日が1,000円デー(男性の方、すみません)。

また、好評なのは夫婦50割引。ご夫婦のどちらかお一人が50歳以上の場合、お二人で2,000円。また、昨年からは、高校生友情割引(高校生3人以上の場合、お一人1,000円)もはじまりました。

さらにもっとお得なサービスもあります。それは、スターキャットシネクラブ。入会金3,000円で一年間、映画はいつでも1,300円。また、会員だけの男性・女性サービスデー(1,000円)もそれぞれ週に2日。それに何と、入会時に招待券2枚進呈(これで、3,000円のもとがとれますね)!

この機会に、入会をご検討されてみてはいかがですか? 詳細は映画屋ドットコムをご覧くださいね。 

 

 

 

深夜枠

公開日 : 2007年05月01日 19時27分

テレビ局にとって深夜の番組枠は、実験的な場となっており、若手の制作者たちが、腕を競って番組をつくっているそうです。この深夜枠から、大きく羽ばたいたテレビマンも数多くいる、とのこと。映画館にとって、この深夜枠はオールナイトにあたります。

スターキャットでは、基本的に毎月最終土曜日にオールナイトシネマを催しています。その折々に併せて、2〜4作品をセレクトして上映するこのイベント。名古屋の映画ファンの間では定着してきたのではないでしょうか? このオールナイトシネマの作品選択にあたっては、スタッフみんなで、毎回、ガヤガヤ、ああでもない、こうでもないと言いながら作品選定にあたっています。

ところで5月のオールナイトシネマは、「パッチギLove&Peacs」公開記念、井筒和幸監督特集「パッチギ!」「ゲロッパ!」二本立て。詳細は映画屋ドットコムをご覧くださいね。

 

 

 

 

楽しむ 〜「神童」〜

公開日 : 2007年04月24日 18時47分

ふとした音に、心を奪われることがあります。風の音であったり、鳥の音色であったり、と。それは、時を越えて人々の記憶を呼び覚ましたり、新たな希望を予感させたりします。音楽の原点とは、この自然の音色なのではないか、本作を観終えた後、その思いが脳裏を過ぎりました。

まず、本作のオープニングが素晴らしい! 池に浮かんだボートの上で午睡をむさぼっている一人の青年、ワオ。そのBGMは、総天然の音色。その平穏な時を少女の叫び声が打ち破ります。その声の持ち主は、天才少女ピアニスト、うた。

音楽を愛しながらも、自己表現の方法に行き詰まっているワオ。その才能ゆえに、周りの人々と適応できない、うた。二人の奇妙な友情関係が始まります。一台のピアノを媒体にして。やがて、そのピアノを通して、一つの奇跡のハーモニーが紡ぎだされていきます。それは・・・

本作の最後に流れるスタッフ表を見ていたら、映画学校で私と同期であった女の子の名前が、スプリクター(記録係)としてのっていました。憧憬の眼差しで、彼女の名前を見つめるとともに、私もささやかながら文章執筆を続けていこう、そう心に誓いました。

 

ほろ酔い

公開日 : 2007年04月18日 18時23分

 シネコン全盛期の現在、地方都市を中心に、駅前映画館が姿を消しつつあります。買い物は商店街から郊外のスーパーへ、そして映画は駅前からシネコンへと。車社会の進行が、それに拍車をかけています。

 しかし、駅前映画館ならではの良さもたくさんあります。その一つは、お酒を片手にリラックス気分で映画が観れるということ。公共交通機関で来れる駅前映画館だと飲酒運転の心配もありません。また、映画を観終えた後、天気が良ければ、あたりを散歩するのもおつなもの。伏見ミリオン座の近くには白川公園もあり、その中には名古屋市美術館や科学館もあります。少し足を伸ばせば、大須や栄にも歩いて行けます。

 まもなくゴールデンウィーク。今年は、駅前映画館でリフレッシュしてみるのもどうですか? 

 

凝縮 〜あかね空〜

公開日 : 2007年04月11日 13時12分

 最近、小説やコミックを原作とした映画が増えてきたように思えます。みなさんは、原作を読んでから映画を観る方ですか? それとも映画を観てから原作を読む方ですか? 私は、原作を先に読むこともありますが、映画の足跡をたどるかのように後から原作を読むこともあります。割合的には半々でしょうか。今回ご紹介する「あかね空」(原作 山本一力  監督 浜本正機)は、原作を先に読ませていただきました。

 正直なところ、原作を先に読んでしまっていると、自分の頭の中に、登場人物のイメージが出来上がってしまいます。それゆえに、映画として出来は良くても、自分のイメージと大きくかけ離れてしまってがっかり・・ ということも多々ありました。本作も期待とともに一抹の不安感を抱きながら、銀幕に見つめました。 しかし、その不安は、映画の始まりとともに、消え去りました。原作に流れる時空を大胆に組み替えたストーリー展開、それでいながらも、登場人物一人一人のキャラクターを活かした物語の構図、そして、当時の雰囲気を醸し出す絶妙なロケ地選びと抑制の効いたコンピュターグラフィックの映像。本作は、400ページという長編小説から練り上げれた、小さいけれど、とろけるような優しい食感の、熟練職人がつくりあげた京豆腐のような一作でした。

 「平気!平気!」

 本作を観終えた後、中谷美紀演じる京豆腐屋のおかみ、おふみのこの口ぐせを思わず口ずさんでしまいました・・・